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美丈夫、と云われても不思議のない様な顔立ちに、男は思わず失笑を溢していた。
しかし、男に顔を向けていたのは束の間の事、再び視線を戻せば何やらに火をつけて煙を漂わせている。
「 すまねぇな。まさか女子が、こんな所にいるとは思わなかったもんでよ。」
何処か哀愁漂う背に、喋り掛けてみても返事はない。
返事がない代わりに、ゆらゆら流れて行く白い煙。
時期に夕暮れ時。こんな人気のない場所に女子(オナゴ)一人置いて行く事が出来る程、非道にもなれず
「 もう、夕暮れ時だ。あんたの親が心配するだろ? 」
彼は優しさから声を掛けているのだろうが彼女からすれば鬱陶しい人、かも知れない
「 親、ね…… 」
ポツリと呟かれた声は哀しげに、やはりその場から立ち上がろうとする素振りさえ見せず
「 なぁ、娘さん。こんな所に居ればよ…… 慰(ナグサ)みものにされて、おっちぬのが関の山だぜ。」
悪い事は言わねぇよ、と言いながら男もその女の横に腰掛けて、同じ景色を眺めていた。
「 いないよ。親は、いない。帰る家も、ない…… 」
無い無いづくめ、と何が面白いのか、可笑しそうに笑い男が知らぬ物を始末している
考え込んで要るよりも、意外と口にすれば楽な時があるもの。この場合が、そうなのかも知れない。
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