夢ノ唄

序

「 もし、此処で死ぬなら…… 」

親に会えるね、と少し安堵した表情を浮かべて呟いていた。

その姿を見ていると、まだ若い娘が、と僅かな同情心

「 生きてりゃー、良い事もあるだろうよ。」

彼なりの慰めの言葉だろうか？

己は悪い出来事があれば、常にそう思う事にしている。

沈んでいる暇など一時足りとも、無いのだから

「 良い事、ね…… 」

記憶を捻り出した所で、思い当たらない。

最近は悪い事続き、極め付けがコレだ。誉められた生き方をしていないのか、それとも興味がないのか

無い、とばかりに皮肉の隠った嘲った笑みを浮かべていた。

「 人なんて生き物は、足掻いた所で何時かは死ぬ。此処で、死ぬのもお前さんの勝手だぜ。……だがな、世の中にゃー生きたくても生きれん連中もいるのさ。」

だからな、と先程まで纏っていた筈のおどけた雰囲気は消え去り、真っ直ぐな視線を彼女に浴びせ掛けていた。

「 選ばしてやる。」

偉そうな言い種(ｸﾞｻ)だが、何故か憎めない。

自分を見ているのが解っている為に、ふと顔を向ければ、かち合った視線

話し相手の男の顔を正面から見るのは初めてなのだが、この人は真剣だ、と解る程に気迫と云うものが伝わってくる。