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そんな優秀な妹よりも数分遅れて、織田雄夜はやっと家を出た。
彼は玄関の鍵を閉め、家を後にする。
織田雄夜が通っている高校は、彼の家から歩いて十五分程かかる。
彼は毎日高校までの道を歩いている。
織田雄夜本人は自転車通学をしたいのだが、なぜ彼がそうしないのかと言うと、それには理由があった。
高校では自転車通学を基本的に認められているが、彼の家の区域は、ぎりぎり自転車通学許可区域に含まれていないため、彼は自転車通学が出来ないのだ。
言うなれば、家が近い奴は歩いて来い、というシステムだ。
「はぁ……。めんどくせぇ」
織田雄夜は誰に向かって言う訳でもなく、つまらなそうにだだ一人呟いた。
自転車で道を走っていく人が、例外なく羨ましく見える。
同じ高校の制服を着た人が颯爽と走っていくのを見かけると、彼には尚更羨ましく見えた。
「俺ん家もあと五分離れてれば、チャリで学校に行けたのになぁ」
自転車を漕いでいる通りすがりの学生を見ながら、また一人で呟く。
せめて一緒に高校まで歩いてくれる奴がいればいいのに。
何で俺の回りの連中には同じ方向に住んでる奴がいないんだろう。
同じ方向に住んでる極少数の奴は、みんな部活の朝練で忙しいから、結局いつも俺一人……。
はぁ……、退屈だ……。
そう一人で悶々としながら織田雄夜が歩いていると、一本の電柱の影に隠れて、誰かが立っているのが目に入った。
住宅街のコンクリート塀に寄り掛かるように、誰かが立っている。
織田雄夜が、それに近づいて行く程、徐々にそれの姿がはっきりと見えてきた。
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