偽善愛

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フロントに鍵を渡し、扉を潜って夜の空気を吸い込んだ。 冬が訪れる匂いがする もうすぐ世の中はクリスマスで騒ぎ出すだろう。 ホテルの前に飾られた安いクリスマスツリーが浮かれる世の中を象徴している。 1組のカップルが私と男の前を、しっかり絡めた手を見せつけるようにして通りすぎて行く。 私がたった今、このヤニ臭い男と出てきたホテルに入るのだろう。 通りすぎた彼女の顔が目に焼き付く。 愛に溢れたあの顔。 もし隣りにいるこの男と私の間に愛があるなら、私もあの彼女ような誇らしげな顔で笑えるのだろうか。 いや、こんな男との間に愛なんて生まれねぇよ。 萎れたブツなんか私の好みじゃねぇ。
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