偽善愛

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「うん。じゃぁ待ってるね」 電話を切り、飲みかけのオレンジジュースを一気に飲み干した。 オレンジジュースは喉に刺激がありすぎるから、殿方に甘ったるいヘドが出るような声で話す私は少しだけ後悔した。 今日の殿方は42歳のオヤジ。 薄い髪の毛に、浮き出る脂汗。 汗染みの付いたカッターシャツを着て、鼻につく加齢臭をさせ私の唇に太い指をそっと這わせる。 上目遣いで可愛く唇を尖らせ、相手の腕に自分の腕を絡め、私は耳元で可愛く囁く。 「前払いでね」 このオヤジはケチな性格だから欲望が尽きると、払いたくないとダダをこねる。 そんなタチの悪いオヤジは前払いで二万円をいただかなくちゃ、私の商売成り立たねぇんだよ。 男がクタクタにくたびれた黒の革財布から二万円を取出し、私の手に握らせた。
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