第四話

3/7
前へ
/77ページ
次へ
習ったよ、中学から六年間も。でもそれは試験用で、日常会話なんて出来るわけ無い… 『亮は中国語上手いんだから、家にいる時ぐらい良いじゃん。』 ちょっと甘えるように言ってみたが、帰ってきた言葉は 『っ駄目、これも約束だから、そう頼まれたの!』 ズキン なんか胸が痛いような…… 分かってる、亮は親達に頼まれただけ。優しくしてくれるのも全部、責任感からで、決して私をどうこう思ってるからじゃない。 ………此処にも私自身を見てくれる人は居ないんだと思うと……… なんか悲しくなって……… 涙が溢れ出そう。 泣きそうな顔を見られたくなくて俯いてると、亮が心配そうに覗き込んできた。 『え?…… そんなに嫌か?………ごめん、俺焦りすぎだよな、ゆっくりでいいよ……蘭のペースで良いから……だから泣くな……』 『っ!』 え?何? 気づいたら亮に優しく抱きしめられてた。 あまりにも突然の事で、離れる事さえ忘れてる。 びっくりして固まってる私に気づいたのか、亮のほうからパッと離れた。 ちょっと寂しいような………初めての男の人の腕の中は広くて暖かかった……
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加