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若い金髪の女性店員はフランクフルトを渡しながら「お客さん、死に急ぐことはないよ。生きていればいいことあるよ」と深刻そうな顔で僕に忠告した。
「死ぬって、誰が?」といいながらお金を払う。
「お客さんが。だってほら、誰にでもわかるような死相が出てるよ」
「そんなに不健康そうに見える?」
「これマスタードとケチャップ」といって、細長い調味入れを渡しながら「先週、お客さんみたいな人相した人が、直後に自殺したんだよね」と続けた。
「自殺なんてしないよ。温泉一人旅だ」
「ならいいけど」
フランクフルトにマスタードを塗って、ベンチに座って食べた。昔から僕は高速道路のサービスエリアではフランクフルトを食べてしまう。きっと習慣なんだろう。
初めてサービスエリアでフランクフルトを食べたのは、僕が小学校低学年の頃だと思う。そのとき、たこ焼を食べていれば、僕は今、フランクフルトではなくたこ焼を食べていたのかもしれない。
串をゴミ箱に捨て、コーヒーも飲みきって捨て、車に戻りまた走らせた。
約三十分後に高速道路を降り、一般道の山道を約一時間で山奥の温泉宿に着いた。
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