憂色―ゆうしょく―

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「レコーディング中に余計な心配掛けたくないから、言わないで欲しいって言われたんだけど…」 今にも泣き出しそうな涼介を見て、何があったのか不安になる。 涼介に対して、誰かが何かを口止めしたのだと気付いた。 誰が、何を口止めしたのか? 涼介に口止めをする人間を思い浮かべるが、見当もつかない。 「瑠璃さんが、元婚約者に付き纏われて困ってる」 先程あった事、瑠璃の言葉を正確に話した。 話を聞いた昭仁の心の中に、一つの不安が生まれた。 瑠璃の心は、自分と正章との間で揺れているのではないか? あの強引そうな男に流されて、自分の(そば)から瑠璃が居なくなってしまうのではないだろうか? やっぱり年下よりも年上の方が良いと、自分の前から姿を消すかもしれない―と、昭仁のマイナス思考が暴走を始めた。 「昭仁さんが、自分一人のモノじゃないって言う瑠璃さんの気持ちも判るんだ。でも、このまま放置して、エスカレートしたらって考えると…」 涼介も、昭仁に負けず劣らずマイナス思考の持ち主だった。
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