雨宿り

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雨宿りのつもりで喫茶店に入った筈だった。それなのに、雨は一向にやむ気配はない。 急いで帰らなければならない用事もなかったから、雨宿りをすることにした。が、まさか二時間も足止めを食らうとは、思ってもいなかった。 途中―一時間程が経った頃、一度雨足が弱まり、この隙に店を出ようかとは思った。が、部屋に戻っても暇だし、このままやむだろうと考え、無理に帰らず、店に残ることにした。それが間違いだったと反省した。 店に残ることにしてから一時間、雨足は(また)強くなり、バケツをひっくり返した様な土砂降りに、身動きが取れなくなった。 迎えに来てもらおうにも、こんな時に限って、誰も捕まらない。 二時間に及ぶ雨宿りにウンザリして窓の外を眺めていた。 胸中(きょうちゅう)の思いは“早くやんでくれ”だった。 雨で白く(かす)む外をぼんやりと眺める昭仁(あきひと)の視界に、一組の男女の姿が映った。 普通のカップルなら、気にならなかっただろう。
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