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雪がしんしんと降っている静かな夜。
もうすぐ十二時を刻もうとする時計台の上に、人影が二人立っていた。
雲越しから満月の淡い光が差し込まれ始めて、二人の姿が照らされる。
一人は低い背丈に黒のニット帽を被り、同じく黒のレインコートを着た、まだ少し幼さが残る少女だった。
被っているニット帽からはみ出している長い金色の髪は、寒風になびいて揺らめいている。
街を見ている透き通った蒼眼が、横に立っている男を見た。
「『子供』達は何人だっけ?」
「ざっと五十人……、だな」
横に立っている男は、短髪の紅い髪に瞳をもった青年だった。
彼は雪が降る中でなぜかノースリーブの、全く今の状況に一致してしない薄い服を着ていた。しかし、本人は寒くないのかいたって平気そうである。
少女は手にグローブを着け、横にあった自分の身長と同じほどはあろう物体を握り締める。
それは岩を荒削りして作ったような、斬るためのものじゃなく、壊す事に適した黒の大剣だった。
かなりの重量であろうそれを、少女は片手で振り上げた。
「じゃあ、いこうか」
それと同時に、十二時を告げる最初の鐘の音が静寂を打ち消していく。
『雪の降る静寂の街。全ては寝静まり、残るは悪い子供達』
少女は歌っていた。
『お前達に優しい眠りは訪れない。安息は与えない』
瓦礫となった、元は一つの建物であった物の上で、静かに歌っていた。
『私が届けよう』
音程も何もない、ただの言葉を歌っていた……。
『最高で最悪の、罰と束縛というプレゼントを』
ただ、淡々と…。
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