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「初めてなら分からなくて当然だな。あれは、閻魔大王様と言って天国か地獄、どちらに行くかを決める方だ」
そう言い、男は丁寧に説明をしたが、啓太はどうも腑に落ちない事があった。それは、男の吐く息が酒臭いと言う事だ。
(死後の世界に酒とかあるのか?)
啓太は腕組みをして、考えながら男の言葉に頷いた。そんな時だ、啓太がふと何かに気が付いて、男に質問をした。
「そう言えばおっさん、何でそんな事知ってるんだ?」
「ああ、その事ね。俺は元々、天国に居たんだよ。でも、天国で悪い事をしちまってね。これから地獄に行くとこなんだよ」
「そんな事出来るのかよ?」
「もちろん出来るさ。それに、地獄から天国に行く事だって出来るんだぜ」
そう言って男は笑った。そうこうしている内に、啓太の番が回って来た。
「お前は……うーん」
啓太の顔を見るなり、閻魔大王は腕組みをして考え込んだ。
唸りを上げた閻魔大王は、机の引き出しから一枚の紙を取り出した。
「お前は、中立の世界だ!」
閻魔大王はそう言い、引き出しから取り出した紙に力強くはんこを押した。
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