最後の日と始まり

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「おい、君。危ないぞ!」   遠くから誰かが叫びを上げる。男は、微かに聞こえてくる叫び声のする方へと顔を向けた。顔を上に向けると男の瞳の中に空から落ちて来る鉄工が映った。 パニックになった男は、体を動かす事は出来ず、鉄工の下敷きとなった。   辺りにコンクリートが割れる程の轟音が響き渡った。それと同時に、男の耳には自分の肉と骨が潰れ砕ける鈍い音が響いた。すると、男の事故を嘲笑うかのように激しい雨が男の体を強く打った。やがて、その雨は男の体から出た赤い血を洗い流し、男の体力を急激な早さで奪っていった。   雨で体力が奪われ、男の意識が朦朧として来た頃、水溜まりを歩く音が男に近づいて来た。男は目線を少し上にやる。そこには、紫色の靴を履いて、小太りで変ななりをした男が傘を挿して立っていた。
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