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炎となった啓太の怒りは、啓太自身でさえも押さえきれず、同じクラスメイトの友達に拳を向けていた。
「正樹っー!」
その叫びと共に放たれた拳は正樹の右頬にヒットする筈だったが。
「はい、ストップ」
そう言い、二人の近くを通った180㎝の身長にボサボサの髪をした男が啓太の拳を止めた。
その男を見て啓太は目を丸くして驚いた。
「早主任」
早龍太(ハヤリュウタ)、彼は啓太が働く会社の製造課主任を任せられている。面倒見が良く、とても気さくな人だ。公私をきっちりと区別しているため、上の人達の受けも良く面倒見が良い事から下の人達からもかなり好かれている。
現在三十二歳で既婚者だ。既婚者と言ってもまだ結婚して一年と半年にしかならない。
「お前、何しようとしてんだ? ここで殴ったら、謹慎処分じゃ済まないぞ」
そう言いつつ、龍太は二人を遮るかのように間に割って入り、啓太に仕事場に戻るように言い付けた。
「…………」
啓太は正樹に対しての怒りを鎮められないまま、龍太に言われた通り仕方なく仕事場へと足を運ぶ。
そんな啓太の後ろ姿を見て、龍太は両手で啓太の背中を叩いた。
「おら! しゃきっと歩け。そんで、今日の事は忘れろ」
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