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青い、雲ひとつない晴れた午後。
私は屋上で、ある1人の男の子を待っていた。
――放課後、屋上で待ってます。楓より。
そう書かれた手紙を彼の下駄箱の中にいれたのが今日の朝。
その時の胸の高鳴りは心臓に雷でも落ちたのではないかと思うくらいに激しく脈打っていた。まあ実際に落ちたら止まるのだけれど。
けれど今。今の胸の高鳴りはその時の比ではない。
雷なんて軽く凌いでしまうくらい、例えるなら世界が崩壊するときの地響きみたいな。私の胸は世界恐慌だけれど、そんなことお構い無しに、私の心臓は崩壊による地響きで更に血液を全身に送り出していく。
顔も耳も、指の先まで熱い血液が走り抜ける。過ぎていく血液は熱をそこに残してまた心臓へ帰っていく。
私はあまりの緊張に倒れてしまいそうだった。
それにしても、遅い。
もう30分は経っているのではないだろうか。
私は携帯を開き、時間を確認した。まだ10分しか経っていなかった。心の中で彼に謝った。
その時だった。鉄で出来たドアが軋んだ音を奏でた。
来た。私は胸が高鳴っているのを忘れるくらい緊張した。
なんで来ちゃうのよ。いや、来てと頼んだのは私だけれど。まさかこんなに緊張するなんて夢にも思っていなかった訳で。
私は自分の体がどこかへ行ってしまいそうな感覚に襲われた。
待って。と私は引き留める。
ここからが本番。ここからが正念場じゃないか。
私はドアを越えてきた彼をしっかりと見つめた。
そして鉄のように固まった口をやっとのことで開いた。
「あのっ……」
私の声が澄み渡った空に溶けていった。
~end~
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