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第九話:ー解放ー:
ジールはアリアの手を引き、城へ向う。
二人が中級地区に辿り着いた頃、城の警備兵達が上級地区方向から走ってきた
「居た!!ジール国王様!!」
警備兵のジニスだった。
「何事だ!ジニス!!」
ジニスがすぐさま返事をする
「はっ!下級地区内の港から海賊が二十名程侵入し、下級地区内で暴れている模様です!
そのため、勝手ながら全兵を出動させました!
国王様の命令にない行動、申し訳ございません!!」
ジニスは深々と頭を下げる
しかし、ジールが怒ることはなかった
「いや、こういう時に的確な判断ができない奴こそ使えない奴だ、さぁ、みんな行くぞ!!」
ジールとアリアを先頭に皆が一斉に走り出した
そして、全員が下級地区に辿り着くと、下級地区に住む人間が海賊達に発見され次第に殺されていて凄惨な状況だった。
「なんだ…この様は…」
ジールは怒りに溢れた
「皆!目標は一つ、敵を殲滅しろ!!」
ジールの言葉を合図に皆が一斉に海賊達との戦闘を開始した
「ママ…ママは…?」
アリアは母親の安否が気になって周りが見えておらず、戦場に入って行こうとしている
ジールはそれはすかさずアリアを抱き抱え制止した
「アリアちゃんダメだ、危ないよ!」
しかし、アリアはジールの制止を振り切ろうとする
「分かった。アリアちゃん、じゃあ一緒に行こう、ね?」
アリアは落ち着いて
「うん、」
と一言だけ言った
ジールとアリアは家に向け歩き出す
そして、二人はアリアの自宅に着いた
ジールは万が一のことを考え、アリアを抱き抱えて部屋の中が見えないように入った
案の定母親はすでに殺害されていた
ジールはすぐに部屋を出る
「ママは…?」
アリアがそう言うとジールは
「ママは元気だった。」
と、そう言った
しかし、アリアはジールの嘘に気付いていた
アリアは[ジールが自分のために嘘をついてる]と分かりながらも、涙が溢れた
母親を失った悲しみ…
失われつつある記憶…
警備兵達が傷ついていく…
たくさんの人が死んでいく…
そして、全ての苦しみや悲しみが積み重なり…
一つの憎しみへと…変貌した
「こ…ろ…す」
ジールはアリアの言葉を聞き漏らさなかった
「アリアちゃん、ダメだ!しっかりして!!」
しかし、アリアにジールの声は届かない
「コロス…コロス…」
そしてついに…アリアの目が少しずつ赤く輝きだす…が…頭にある言葉が過る
[人を憎んだりしてはいけないよ]
アリアは激しく頭が痛くなったが憎しみがそれを振り切った
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