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(皮肉な運命)
呪われた子、と言うのは
忌み嫌われる運命と決まっているのでしょうか?
“違う”?“正しい”?
その答えが、私にはわからないのです。
「ではエクソシスト様、我々は次の任務へと向かいますので」
「おー、気をつけてな」
白いつなぎを着た探索部隊に手を振り、自分も本部へと帰るべく駅を探す。
きょろきょろと周りを見渡すとその街はたくさんの人で賑わっていて、なんとも心地が良い。けど信用してはならないと、心に決めているから。
この人混みに入るのは危険だと自分の頭が直感していた。
人だかりを極力避けながら歩を進めてゆく。途中売り子などに話掛けられたりはするが、笑顔で断りただ進む。
ふ、と視線を向けた市場。
その中にある真っ赤な林檎が目についた。その赤は光に反射しとても美しく、無意識に俺は身体を吸い寄せられていた。
『お兄さん、おひとついかが?』
積み重なった林檎の陰からひょっこり姿を現したのは、黒いフード付きのコートを纏った少女。
フードで隠れ表情は見えないが、口元はにんまりと弧を描いている。
俺はひとつ林檎を掴み、ポンと上に投げる。
「ひとつ貰うさ。いくら?」
『‥ありがとう!えっとね、』
歓喜の声を上げた少女は、忙しなく何かを探し始めて。
予想以上の少女の反応に驚いた俺は、暇つぶしにはなるかなと更に少女に近寄った。
「お嬢さん、いくつ?」
『え? ‥‥ぇ、と。16』
「わ!2つしか変わらないんさね」
そう言いながら金を渡し、林檎の乗った台に手を乗せる。いきなり急接近した俺に驚いたのか、少女はズザザッと勢い良く後ろに下がった。
「‥怖い?」
しゃがみ込み、下から見上げるようにして問う。少女はふるふると首を左右に振る。
だけど微妙に見えない、少女の表情。
フード取って、と言葉を紡ごうとしたら
突然、積み重なっていた林檎が爆発を巻き起こした。
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