ラビ

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『きゃぁぁあっ』 「何さ!?」 もくもくと煙る灰色のもやが邪魔で何も見えない。焦げ臭いにおいが嫌に鼻につく。チッ、と舌打ちをして、俺はイノセンスを発動し一歩前に出た。 ひゅんっ、と槌を一振りすれば風が巻き起こり、もやが晴れてゆく。 晴れてそこに居たのは、物凄い形相をした街の人々。 『またっ‥‥』 後ろで震える少女が、ぽつりと呟いた。 「また?」 『私がいるところには、必ずこんな風に変な事が起きるの‥』 だから、私、みんなに嫌われてるんだ。 爆風で取れた彼女のフード。見れば、彼女の髪はどこかで見たことのあるような色をしている。 そして首元のペンタクル。 「アレンと‥似てる、さ‥」 真っ白な髪がゆらゆらと風に靡いて揺れる。白い肌を伝う水滴。ぽたりと地面に落ちて、染み込んでゆく。 どうしたら良いのか、俺にはわからなくて。だってこんな経験普通しないだろ? 呪われている少女を救えだなんて。俺にはそうそう出来ない芸等だ。 街の人は皆アクマだ。火判で一気に焼き尽くし、少女に近寄る。 「ずっとこのままは‥嫌だろ?」 『だけど私が悪いの、だから、このまま私は苦しむ運命なのよ』 「そんなの誰が決めた」 カッと頭に血が登る感触がして。うずくまる少女を見下ろし、溜め息を吐く。 「お前が俺と会っちまったのもまた運命さ」 泣いてばかりじゃ何も変わらない。だから、立ち上がれ。 そっと手を伸ばすと、それに気付いた少女は戸惑いがちに手を重ねた。 アクマが寄ってくるのはお前がイノセンスの適合者だから。 そしてその呪いも何かしら影響を与えているんだろう。 ‥‥凄く、似ている。 新入りの、アイツに。 知らず知らずにたくさんの屍を作り、その上を戸惑いながら歩き続けて。 俺は、何も出来ない。 きっと助けてやれるのはアレンの方だ。 ぎゅっと下唇を噛み締め俯く。少女はゆっくり立ち上がり、身体についた埃を払っている。 悩む俺の服の裾を引っ張り、彼女は。 『お名前、知りたいな』 無邪気な笑顔を向けるものだから。堪らなくなって、俺はきつく彼女を抱き締めた。 (もう、泣くな。) .
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