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(とある日常のとある異変)
『アンラッキーデー、アンラッキーガール』
「るっさい不幸が移る近寄んな」
『存在しててすみません‥』
いつもは通る冗談も今日は通じなくて、ただどんよりとした空気を背負いながら部屋の隅っこに佇んでみる。
その状態でぼそぼそと話す私の姿は不気味以外のなにものでも‥いや、楽しげに見えるならそれはそれて良いんだけどね、ははん!
「何そのノリ、どうしたら良いかわからなくなるんだけ」
『どうしたらいいかわからんのは私だぁぁぁあ!!』
「ちょ、おまっ、落ち着け」
『‥‥っはー‥‥ぁ』
「随分深みのある溜め息だな」
『海より深い溜め』
「で、どうした」
『‥‥‥』
なんでこいつはこんなに冷静なんだろう、なんでこいつは焦っていないんだろう、いや、焦る必要はないけども。
床に落としたままだった視線を持ち上げ、その死んだような瞳と目線を合わす。
ときめきもなにも感じない、なんのオーラも見えない銀ちゃんと。
「今失礼なこと考えたろ、俺が傷付くようなこと考えたろお前」
『うわヤダ自意識過剰?ナルシなの貴方って』
「その口調腹立つんですけどォ!」
『あら否定はしないのね』
「もういーや、とりあえずお前今日帰れ」
『‥用が済んだら捨てるのね‥最低、男っ』
「聞き飽きたわァァァァア!!」
がっしゃーん!っと机を投げ飛ばし、ずんずんと銀ちゃんが私の元へ詰め寄ってくる。
(ぐわ、なんかにおうよ)
相変わらず光を帯びていない瞳で見下ろし、逃げられないようにと壁に手をついて私を囲い。
「で、どうしたんだおめー」
気にしてはいてくれたようで、と言うかもう諦めに達しているのかもしれないけれど。
開いている手でわしわしと頭を掻きながらそう言う銀ちゃんが面白くて、私は、
笑い出した。
(ごめん、なんでもないよ、じつは)
(‥‥はい?)
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