沢田綱吉

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(純情恋歌) 風がつめたい。まだ夏だろとタカをくくり半袖で出てきてはみたが、やはりまだ人肌には厳しく生身ではキツいものがあって。 先ほどまで右手にあった温もりも、今はもう冷え切っていて。その手のひらは、風に晒されている。 血が流れる膝。風が染みて、時折激痛を巻き起こす。ガーゼもばんそうこうも貼らないままなのだから、当たり前だろうけど。 『って、私何でこんなセンチメンタルなの』 「自分でツッコミ入れた!?」 『あー、ツナ』 なんでここにいるの?っと首を傾げて問えば、ツナはいきなり立ち上がって何かを言おうとする。 何さ、言いたいことがあるなら言いたまえよ。 キッと敵視するようにツナを見上げ睨みを効かせれば、ツナはごくりと唾を飲み込み肩を震わせた。 どこか必死なツナ。沢田、つなよし。 ここは学校の玄関にある階段の端っこ。2人ぴったりと寄り添うように座って、何だか仲良しさんみたいね。 「‥‥っ血!」 やっと声を出したかと思えば、たった一文字。一声。 でもまぁ、ツナの必死さはわかったから、そこは弄らないであげるけど。 ふと見下ろせば、結構皮がべろんと剥がれ広い範囲で血を滲ませている、醜い自分の膝。 そっと手を伸ばし触れてみれば、未だに乾かない血がべっとりと指について。 『ツナ、どうしよう』 「どうしようじゃないよ、全くー!!」 わしゃわしゃ、と髪をかきむしりツナは叫ぶ。あははと笑えば、ツナは呆れたような顔をし溜め息をついた。 『追いかけたらね、突き飛ばされて、コケちゃったの』 乱暴よね。 ひゅう、と2人の微かな間を吹き抜ける冷たい風。季節の変わり目、ってこうやって感じるんだ。初めて知ったよ。なかなか風流だね。 隣に座るツナを纏う空気が微かに変わり、重くなったように感じる。ふと視線を向ければ立っていたはずのツナは私の横に腰を下ろし、俯いたまま両膝に拳を乗せている。 ツナ、治療してくれるんじゃないの?っと声を掛けても反応すらしない。 『つな?』 泣いてるの? そっと頬に手をやると、微かな湿り気を感じた。 (幸せにするからと、譲ってやったのに) (泣きたいのはお前の方だろ?) (‥ごめん、俺、泣き虫だ) (ツナは、優し過ぎる) (でも、まだ) (甘えちゃいけない、) .
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