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:)雲雀恭弥
(偶然)
いつもと違う、ひんやりとした空気を漂わせた通学路。マフラーに顔をうずめ、私は空をじっと見つめながら道を歩いてゆく。
隙間から溢れる白い吐息。
はー、っと長めに息を吐けば、それ相応の大きなもやが辺りに広がった。
(寒い時には‥‥甘いもの、か)
誰が言ったかは忘れたが、前にそんな事を聞いた気がする。
寒さで麻痺しているのか、はたまた別の理由なのか。思考回路がきちんと働かない。
今頭の中に思い描くのは、“甘いもの”。買い喰いなんて滅多にしないけれど(寧ろ見つかったらヤバいし)、今日だけは何かを口にして帰りたい気分だった。
ふと見つけた駄菓子屋に入り、飴やらチョコやらを買いポケットに入れる。
ひとつ、チョコの包みを開き、ぽいっと口に放り込んだ瞬間。
後頭部に、何か冷たい物があてがわれました。
‥待て待て待て待て、
早過ぎないか?
『つけてました?』
雲雀さん。
振り返る事無く私は呟く。あぁ、当然口の中のチョコをもごもごと溶かしながら。
「偶然だよ」
頭に当てがわれた物に確信せずにはいられなかったけれど、聞こえた声にそれは確かになって。
偶然か。それが本当なら私はかなり不運な子だ。その偶然によって私はきっと伸されてしまうのだから。
そんな事を考えながら私は返答もせずにただ口を動かす。
その様子が気に入らなかったのかどうかはわからないが、後頭部に当てがわれたものに圧力が掛けられた。
『いだっ‥!痛い!痛いですっ!』
「うん、良い反応」
『怒りますよ!』
「君が?」
微かに漂い始めるピリピリとした殺気。
きっと心底鬱陶しく思われているんだろう。すみませんね慣れなれしくて!今日の私は怖い物知らずさ!
とりあえず明日を平穏に過ごすには、なんとかしてこの状況から脱しなくてはならない。
イライラにはカルシウム、っとカバンの中に何か無かったかと考えるが、カルシウムが含まれた何かは無い気がする。
入れた記憶が無い。
「いつまで黙ってるの?」
『今食べ終わりました』
「ワォ‥良い度胸してるね」
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