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(真夏の暑さとお兄ちゃん)
帰って来たら
妹が、入り口で倒れていた。
「…なにしてるの」
下半身を段差の下に放って、ぴくりとも動かない少女。
てゆうかスカート短い。
見えるか見えないかの瀬戸際なんだけど、今。
無防備に晒された白くて綺麗な足をちょっと蹴ってみれば「‥ん‥」と彼女は微かに声を洩らす。
が、未だ目は覚ましていないようで。
‥寝てるの?
それとも気絶してるのかい?
今ので起きると思ったが起きる気配が無いためとりあえず彼女をどうにかしなければならない。
「狭い玄関占領して爆睡なんて‥」
女だとは思えないね。
ぽつりと呟き腰を下ろす。
未だ履いたままの靴を脱がせ、両脇に手を入れる。
鞄はどこにやったんだと辺りを見回したら遥か遠くに姿を見つけて。
一体何があったんだ、と心底呆れた顔をしながら彼女の身体を持ち上げる。
触れた肌に、違和感を感じた。
(…熱い)
額にじんわりとにじむ汗。
顔を覗き込んで見れば荒く呼吸を繰り返している。頬は赤く染まり、眉をひそめ。
ただ疲れたからとかでここに倒れているわけではないことを今見たものが物語っていた。
「なんでこんなにバカなのかな‥」
また、溜息を吐く。
君の傍にいたら溜息が絶えないよ、まぁ仕方ないけどさ。
「って‥全然仕方なくないよね」
引きずってきた身体を居間のソファへと放り投げる。
氷まくらに、冷えピタ。
首の後ろ脇の間に氷のうを挟んで。汗ばむ肌は適度に拭いてやる。
「‥良く、家まで耐えたね」
帰宅途中にもう倒れたい気分だったろうに。そんなに具合が悪いなら僕を呼べば良かったのに、草壁にでも送らせたよ、言ってくれれば。
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