第一章 やんちゃくれ

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おい、おい。 お前ら、昼日中から何しとんねん。 こんな天下の往来で。     誠次だった。     あっ! 誠次さん、すいません。 ちょっと揉めてますねん。   俺はしどろもどろに状況を説明した。 タケシは表情も変えずに会釈をしただけだった。   今までの一触即発の空気はとりあえず緩んだ。     何やお前は!?     金山は左肩を前に出し下から上に視線を移しながら、誠次に噛みついた。     おいおい、坊主! 物の言い方一つで丸いもんでも、尖ったりするんや。 気ぃ付けて物言いや。     誠次は落ち着いていた。 端目で見ても貫目の違いは一目瞭然だった。     喧しいわぃ。 われっ、俺を誰や思うとんねん? おぉ。     尚も執拗に金山はゴロをまいた。     怖い兄ちゃんやのぉ。 誠次は物怖じすることなどなかった。    東條組の金山じゃ。     ほぅ、それがどないしたんじゃい? 坊主、代紋出しての話するんかい!? 腹据えて物言えやぁ。     ごちゃごちゃ言わんと来んかい!     おぉ、われも代紋きった限りはちゃんと扱うたるわ。 のぉ。 わしは速水組の秋山の若いもんで榊っちゅう者や。 ええか坊主、極道はゴロまきゃええってもんやないぞ。 もう一回考えて筋道通せや。     何をごちゃごちゃ言うとんねん! 喧嘩に筋道もくそもあるかい!勝つか負けるかじゃ。 四の五の言わんとかかってこいや。     元気のええ奴っちゃのぉ。 お前らみたいな坊主相手に喧嘩したら、わしが笑われるがな。 一回は飲みこんだるさかい引かんかい。     誠次は我慢強く掛け合った。揉め事は出来る限りさけたいようだった。     おぃ、喧嘩も出来んのか? こらっ!     流石の誠次も 金山のこの言葉には堪忍袋の緒を切ってしまった。     おぃ、鼻タレ! 極道の喧嘩の仕方教えたらぁ。     そう言った顔はまるで憤怒に満ちた仁王のようだった。
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