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誠次はゆっくりと、しっかり足元を固めるかの如く間合いを詰めた。
山門にある仁王像がまさに具現化したように見えた。
金山や言うたのぉ。
極道ちゅうもんは喧嘩する時は我がの顔と名前でするもんや。
ええか、組の名前を出した時点でお前は一番守らなあかんお前の親分をこの場にぶら下げたんじゃ。
東條組長の首かけて喧嘩するだけ値打ちのある話やったらええけどのぉ。
代紋ちゅうのは、それだけの重みのあるもんじゃ。
この喧嘩、売られた限りは買うたる。
榊組 組長 榊誠次がなぁ。
いつもの優しさのある誠次の目ではなかった。
そんな誠次を見るのも初めてだった。
金山の表情が目に見えて歪んでいった。
榊の言葉の重さに馬鹿は馬鹿なりに道理を悟ったようだった。
ま、待たんかい!
お、俺は親分の名前で喧嘩するんやないわい。
俺がするんじゃ。
こら、鼻タレ坊主!
そんな言い訳は死んでから言わんかい!
金山がジリジリ後退りするのがわかった。
人通りは少ないとはいえ大阪球場の入り口に二つの異様な塊が対峙する姿は人目につきすぎる。
誰かが通報したのだろうか、サイレンの音が近付いてくるのがわかった。
日本橋の電気屋街の方から自転車に乗った警察官が3人、サドルから尻を上げ必死にこちらへ向かってくるのが見えた。
俺達のうしろからは橋本が10人ぐらい若い奴らを連れて怒号をあげながら近付いてきた。
事態は一変した。
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