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戎橋筋は難波駅から北へ続く商店街である。
高度成長の真っ只中の大阪はキタとミナミの二極化して繁栄していった。
キタは北新地など官庁街に近くハイソサエティな色合いが濃かった。
それに対してミナミは庶民的で気取らない気風の街だった。
俺とタケシは商店街の人の流れなど関係なく立ちはだかるものをも避けなかった。
障害になる人の塊も二つに裂きながら進んだ。
タケシは一見しても普通の青年にしか見えなかった。
細身で背も高くたまにするアイビーファッションは男でも憧れを感じるほど似合っていた。
ミナミの街に蔓延る(はびこる)不良達のリーダー的存在とは知るよしもなかった。
それに比べて俺は俗に言うヤンキーそのものだった。髪型は定番のパンチパーマ、服はジャンバースーツ。
威圧感を、いやらしいと思うほど撒き散らしていた。
なぁタケちゃん、誠次さんて惚れるよなぁ。
ほんまにザ極道って感じやもんなぁ。
格好ええわ。
純ちゃんは、やくざ映画見て映画館でてきたら完全にやくざになった気分になってるもんなぁ。
辞めときや!やくざなんかなったらあかんで。
所詮やくざはやくざや。
タケちゃん、ようわからんけどやくざはやくざってどういう意味なん⁉
やくざはやくざやろ。
純ちゃんは、ほんまのやくざの汚なさ知らんねん。
うちの親父の会社もやくざに潰されたんや。
俺はやくざは嫌いや。
ほな、なんで誠次さんとかと付き合いしてるん⁉
俺は利用してんねん。
純ちゃんは、惚れやすい性格やから気ぃつけや。
誠次さんも、俺らを可愛がっても損せえへんから可愛がってくれるねん。
利害関係なくなったら、どうなるかわからんよ!
誠次さんはそんな人やないで!タケちゃん。
あの人は信用できるって。
また純ちゃんの悪い癖が始まった。
あかんあかん!
やんちゃはええけど、やくざはあかんで!
珍しくタケシは興奮していた。
なぁ純ちゃん、俺は純ちゃんやから言うてんねん。
他の奴やったら放っとくがな。
タケちゃん…。
俺達二人は戎橋まできていた。
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