第一章 やんちゃくれ

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純ちゃん! 大変や、大変や。 殴り込みや。 はよ来てや。 純ちゃん!はよはよ!     何やねん? 騒がしいのぉ。どないしたんや。     ガチャ(天下茶屋)の奴ら、殴り込み来とんねん。 タクとミツオら、いわされてもうたんや! 今、タケちゃんが向かってる。 純ちゃんに連絡取ってくれってタケちゃんから言われたんや。     そんなもん、タケシ一人で充分やろ。     そんなことあらへんて! 向こうは10人以上おるらしいんや。 とにかく、はよ行ったってえな。     その頃の俺は日本橋に近い黒門市場の路地裏にある陽も射し込まない長屋に住んでいた。   玄関の引き戸も傾いて片手では開け閉めもできないほどくたびれた住まいだった。 橋本は、その引き戸をぶち破るほどの勢いで転がりこんできた。     俺は朝方まで野暮用で走り回っていたので目が覚めたのは、とっくに昼を回っていた。     橋本! みんなどこにおるんや?     俺は寝間着姿のまま土間の上がり框に腰をかけた。   橋本は息を切らし土間に座り込んでいた。     純ちゃん、今日はガチャの奴ら本気モードやで。 こっちも人間揃えんとやられるわ。     心配せんでええがな。 どこやねん? ガチャのヘタレどこでゴチャしとんねん?     多分、文楽劇場の辺りや思うわ。     わかった、橋本。 みんな集めろや。 20人ほどはすぐ集まるやろ。 とりあえず文楽劇場に集合や。     わかった!純ちゃん、行ってくるわ。     橋本は表にひっくり返ったママチャリ(婦人用の自転車)に股がり細い路地の出っ張っているもの全てを引き倒しながら消えていった。image=296312576.jpg
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