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やれやれ、よう懲りもせんと来よるなぁ、ガチャの奴ら。
俺はいつものように簡単にカタがつくと安易に考えていた。
薄暗くカビ臭い部屋の畳の上へ寝転んでタバコに火をつけた。
大きく吸い込んで吐き出した。
吐いた息にだけにしか動かない紫煙が電気のカサに居座った。
澱んだ空気を掻き分けるように息を吐き出す。
カサに溜まった紫煙が渦を巻いたまま同じところを回った。
よっしゃ!いこかい。
寝間着代わりのジャージを脱ぎ捨てて押し入れの中に吊るした服を取り出した。
言わば勝負服である。
この頃の、やんちゃ連中の三種の神器とも言えるツッパリ服であった。
普通の給料では簡単に買うこともできないほど高価なものだった。
昭和57年
俺 『高城 純』18才
触る物全てを傷つけるほど尖っていた。
男とも女ともとれる『純』て名前が嫌いだった。
親をも恨んだ。
当時の大阪の街は
豊かではなかったが戦後復興も終わり高度成長の真っ只中にあった。
周り近所も省ぬ杭打ち機の轟音と振動にも慣れて眠れる時代だった。
もし今なら一発でも杭打ち機を打ち下ろすだけで、その工事は止まってしまうだろう。
ガッシャン!ガッシャン!
ガッシャン!
ドッドッドッドッドッ!
削岩機が唸った。
そんな喧騒も子守唄だった。
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