第一章 やんちゃくれ

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黒門市場の人混みを掻き分け日本橋まででた。 黒門市場は大阪の台所と呼ばれ昼をまわるとなると、かなりの人混みになる。   阪神高速の桁下を通りぬけ文楽劇場の前まで来たがそれらしき人影はなかった。   あれっ? おかしいなぁ。誰もおらんがな。 どないなってんねん?   その日文楽劇場の催し物はなく、いるのはポン引きのおばはん達だけだった。     おばちゃん、おばちゃん!   兄ちゃん、何や? まだええ娘おらんで! 6時くらいやったら若い娘おるけど。   おばちゃん、違うがな。 そっちは間に合うとるわ。   ほな、何やねん?   おばはん! 客と違う思うたらえらい愛想ないやんけ。 違うがな。 この辺で、俺ぐらいの年の奴らの塊見んかったか?   あんたぐらいの年格好なぁ…あぁ、さっき仰山走っていったで。 えらい怖い顔して走っていったがな。   どっちむいていった?   どっちって向こうむいていったがな。   そう言いながら難波の方を指差した。   おばはん、何人ぐらいおった?   せやなぁ、前に5人ぐらいで後ろから10人ちょっとおったんちゃうか? あんたとおんなじこと聞いた兄ちゃんらが、そのあと3人走っていったわ。   最後の3人がタケシ達だろう。   おばはん、ありがとうなっ!   おばはん、おばはん言いな!うちはまだ40過ぎたとこやねんからなぁ!   40越えたらおばはんじゃ! あっいや、お姉ちゃんありがとう! 後からまた来るやつに、純ちゃんらは難波のほう行ったって言うてぇな。   純ちゃんてだれや?   邪魔臭いなぁ。 純ちゃんて、俺やがな。   あぁあんたかいな。 わかった、言うといたるわ。   頼むわ!   そう言って俺は千日前通りを難波に向かって走りだした。 初夏の生暖かい風が俺のからだにまとわりついた。image=296404779.jpg
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