第一章 やんちゃくれ

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矢嶋(タケシ)、高城よ。 相変わらず跳びはねとんのぉ。 気ぃつけんと長生きできんぞ。     ガチャ(天下茶屋)のツッパリ共に囲まれてタバコを斜めに噛みながらニヤニヤしていた金山がゆっくり俺達の前に間合いを詰めてきた。     それがなぁ今回は俺のシノギがかかっとるんじゃ。 小山は俺の若いもんとして拾い上げたんでなぁ。 これからは、嘗めた口きいたら俺が承知せんぞ。     金山の横で天下を取ったように小山が胸を張った。     へぇ~。 金山さんも値打ちが下がりますよ。 こんなヘタレ、若いもんにしたら。 こいつは平気で自分の連れを売ったり義理もクソもないクサレですのに。 まぁ僕らには関係ない話ですけどねぇ。     タケシは物怖じすることもなく切り返した。     小山は顔を潰され荒れ狂いだした。     静かにせえや!     金山に一喝され一気に固まった小山を俺達は嘲笑した。     金山さん、そもそも今回の件はそちらの人間が俺等の縄張りを荒らしたから揉めてるんですわ。 電話BOXの電話の右面は俺等のビラ貼りの場所ってのは知ってますよねぇ。 坂町の速水組本部長の秋山さんとこの店のビラしか貼れんようになってますけど。     タケシ! 誰がそんなこと決めてん? おぉ。 俺は俺のやりたいようにするんじゃ。 文句あるんならいつでも東條組が相手になるって言うとけや。     金山さん、何組がどうやとかこうやとか俺等には関係ない話ですわ。 俺等は秋山さんに色々世話になってるんでねぇ。 うちのビラの上にそちらのビラを貼られると、俺等も面子がないんですわ。     それに貼り場所はミナミ界隈は割り付けも全て決まったことですやん。 うちやのぅても、揉めるんちがいますの。     せやから、今からは俺が割り付けも決めるんじゃ。 まずは一等場所から取らんとのぉ。     金山さん、気ぃ狂うたんですか? 金山さん殺されますよ。     おもろいやんけ、いつでも相手になるがな。 誰が俺を殺しにくるんじゃ。     俺はタケシと金山のやり取りを聞きながら震えていた。 金山がいつ切れるか…。 想像するだけでも恐ろしかった。 いくつもの伝説をもった男だったからだ。
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