偽りの世界

5/5
前へ
/14ページ
次へ
それは、いつもと変わらない、いつもの電車の中でおこった―‥‥ 「んじゃね。気ぃつけてなぁ。」 「うぃ☆そっちもね。」 そんなこんなで、今日も一日が終わろうとしていた。 「はぁ‥‥。」 学校が終わり、友達という存在と別れて電車に乗る。イヤホン付けて、いつものように音楽に耽りながら車窓からの景色を見る。もうすぐ夜だ。 私は夜が好き。 誰にも見られず、闇が私を隠してくれる。本音から何から何まで、すべてを隠してくれる。そんな事を考えながら、私は最近ハマりだした新選組の本を読み出した。 丁度ラッシュ時だったから、私は一駅ごとに奥へと追いやられていく。いつの間にか、車両と車両を繋ぐドアの所まで追いやられてた。 あと3駅で下車する駅だった。 キキーッッ ガタンッ 「うわっっ!!!!」 ほんの一瞬の出来事だった。 電車の急ブレーキでよろめいた拍子に、車両を繋ぐドアを開けてしまい、そこに倒れこんだ‥‥はずだった。 「あれ‥‥?」 ドアの先は真っ暗な闇。 あの鉄板の床もない。 当たり前だが、私は真っ逆さまに落ちていった。 いつまで続くかわからない闇。 地面がないのは流石に怖い。 しかし、地面らしきものはおろか、光すらない。 体と首を最大限にひねって上を見てみると、私が落ちてきたはずの、あの車両の光すら見えなくなっていた。 とりあえず、地面に着くのを待とうと、衝撃を最小限にしようと、クッション代わりに鞄を体の下にして、きつく目を閉じた―‥‥。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加