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ぐちゃっ!ぐしゃっぐしゃっ!くしゃり!
止まることのない濁音。破裂、圧迫、破壊。
『・・・どうとでも言えよ』
餌の言葉は分かりにくい。
今も時々分からない。
怨の言葉は―――解せない。
ろくに話せてたことなんて、なかった。
コミュニケーションというのはなく、ノイズで。
ノイズというには、モスキートで。
通話というなら、無電に近く。
一方通行。一方通告。一方宣告。
ぐしゃぐしゃぐしゃぐしゃぐしゃっ!
『・・・』
お前と僕が殺めているのは仲間だった奴らが大半で。
つまり同じ化物で。
いわば、同属殺しで。僕はつまり共食いをして。
『弱いというのは、大概が、人間の派生だろう。弱いなら同属ではないーーー生き残ったモノが化け物だ。劣化したら』
それはダミーに過ぎない。
『こいつらが、そうだって言いたいのか』
『その通り。』
そう言い切るは、“五十厭”最後にして、最悪。
『・・・ふむ。本当に弱い。やはりつまらん』
そうだ。
『一層こんな弱い世界ーーー消してしまおうか』
その時は、きっと思い付きだったのだろう。
しかし、その突拍子もない提案に、その無表情は、少し名案だと瞳は見開いていた。
炯炯と。獣のように。
『冗談。お前でもそこまでは無『それは、分かるまい?』
その否定が刹那、僕は再度、奴を真正面から認識する。
すると、あの無表情が。
微笑んでいた。
ぞくりとして、堪らず僕は声をかける。
『・・・おい』
『そうと決まれば、こんな些細な早々終いにしよう―――亜行ラグナロク。“継続する破壊”(ロストエターナル)、そして、“傀儡”(デス・ドール)の俺だ。
他に既存の意義なぞは無い。唯、壊すがのみ、飲み干すがのみ』
――――此れは終わるがのみの、紡がれぬ調。
―――世界など。
『壊れて跡形も無くなればいい』
そう囁くラグナロクを、止める術など、僕にはなかった。
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