シャングリラ

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「おっ前、足りないんだよ」 以下、現在。 どぱりと、墨のような雨が降り注ぐ中。 暇健康は、再び僕の街に現れた。 バイクは僕がかっ拐ったのだからどうやって来たものかと、考え。 けほりと、その登場に、再びむせる。 口元の朱を隠さない。酷く視界が歪む。 眩むような、揺れるような錯覚に、ただ。 パタンと、忌々しげなメールが受信された、パソコンを閉じた。 「だから・死ぬ」 「それは理由になってないな・・・。何が足りないって言うんだ?」 嘲るしかない。 「・・・血ぃ拭け」 「別に・平気だよ」 これくらい。 僕の切り返しに、暇は、はーあとため息をつき。 「ないというか、機能して“ない”。―――繰り返す、血ぃ拭け。その喀血、死への第一ステップ。初期症状オデメトー」 「・・・っ」 ぐいりと、咄嗟に拭う。 そして。 「・・・だから何が足りないって、ないって言うんだっ!」 喚いた。 「死ぬって分かってたんじゃねえのか」 「死期が近いのを悟ってただ。原因なんて見当あり過ぎて分からず終いだ・・・っ!何が足りないって言うんだっ!」 柄にもなく、溜まっていた疑問も疑心を喚いた。 「そう、がめつくなし。そう急くなし――――腎臓と肝臓だ」 「 、」 端的で、わかりやすい診断だった。 「要は毒素とか、アルコールとかめんどくさい人体への支障を来す要素を消化機能を司る臓器が―――」 “お前にはない”。 「・・・」 「でも、レントゲンには、“それらしきの”は、映るんだよ。これ、なんだと思う?」 「・・・装飾?」 売り物として。 「答えはノー。これ、お前の“元”腎臓肝臓」 「・・・取り忘れたのか」 もう自嘲するしかない。 そんなものが、詰まっているという自分を、笑い飛ばしたくなるし、腸(はらわた)を抉りたくなる。 「や、乳児くらいまでは、機能してたっぽいんだよ、それ。が、現在、猛毒や有害なガス。そして、人を栄養分にできる臓器に作り変えられている」 臓器あるゆえの、人食い。 種明かし。 またその臓器あるゆえの。 「人並みの不純物への対応ができない根源。例えば」 アルコール。 「・・・四季彩が、香水を付けてなかったのは、お前の指示か」
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