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そいつは低く唸った。
聞き取り難い声だったが、それは耳に届いた。
亜紀だと?
亜紀は自身の名が上がることなどないことを知り得ていた。なぜならば、人生まれの鬼が族長に着くことは禁忌とされているし、何より父に嫌われていたのだ。
亜紀を見ればところ構わず折檻する父を心から親と仰げるはずもなく、ただ恨めしく睨み付けることしか彼女にはできなかったのだ。
それなのに族長だ?片腹痛い。
『何故あの子の為に禁忌まで破ろうというのだ。許さんぞ俺は許さん』
激情した奴は、投げやりに叫ぶと、父に掴みかかった。
父が負けるはずなどない。その意味のない思いは数人の鬼により消え去った。
笑えるかな、その中には兄弟で、族長かといわれる白木や范樹の姿もあった。
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