血脈

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*** 母が語るのを神妙に聞いていた。 初めて明かされる事実は知りたくないような、知っておかなければならないようなそれこそ茜は誰を攻められるはずもなく聞くに徹するしかなかったのである。 母が鬼であったこと。同時に人でもあること。 そして茜に鬼の血が混ざっていること。 変えられようのない事実だけ見たとしても目を背けたくなる。 だからなんなんだ。いいじゃないか。母さんは母さんだろ。言うのは簡単だ。だが、その言葉自体に責任を負うことなど今の茜には手一杯だ。 茜に及ぼす影響が少なからずあるのだから生半可な思いで口にだすことは出来ないのだ。 一つの話の句切をつけた母は、雪見窓から外を眺めていた。 慎重に話を選んでいるのかそれともこころを落ち着かせたいのかは定かではない。
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