傘 ―In Two―

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 健一も、その希望と、何よりも友の為を思って作業を進める。  そこでふと、肌に冷たい何かが当たった。  その場所に手を当てながら、健一は空を見上げる。 「……雨か」  空には、黒く暗い雲が敷き詰められていた。        †  ビュー! という窓の隙間風の音でハッとする。  机に向かっていて、集中してたから気付かなかったけど……。 「……ひどい雨だ」  窓を閉じて、独り言を呟く。  ふと時計を見れば、もうそろそろ礼の大学の講義が終わる時間だ。  礼、こんな酷い雨の中、大丈夫かな……。  隙間風の音が鳴る程だから、風も強いはず。  傘を持ってても、きっとずぶ濡れに……。 「……………………………」  あれ……今朝、礼は……。  小さな疑問は、すぐに確かなもののように思えてきて。  俺はすぐに玄関に向かった。
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