80人が本棚に入れています
本棚に追加
そこには――
「…………………………!」
――礼がいつも使っている綺麗な水色の傘があった。
「―――――――――っ!」
俺はこれっぽっちも、悩まなかった。
†
空から降り注ぐ雨が、重い。
体に当たる雨粒は、一つ一つが衝撃と成って、体を濡らす。
激しい雨のせいで、差している傘はもはや何の意味も無かった。
周囲の人間は奇異の目で俺を見る。
それでも、俺は走り続けた。
綺麗な水色の傘を持って、俺は走り続けた。
†
「ふぅ……」
もう何度ついたか解らないため息を、またつきながら私は空を見上げた。
いつもは白い綿のような雲が、今日は黒に近い灰色を染み込ませている。
それどころか、視線を元に戻せば、激しい雨が地面を叩いていた。
最初のコメントを投稿しよう!