―序章―

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「ふぅ…ふぅ…」 落ち着いてきた。 というか驚く事があって、落ち着かされてきた。 殴った壁に穴があくのだ。 蹴れば壁は砕ける。 最初は日頃の地道な筋トレが実を結んだのかと思ったが、悲しいがどうやらそうではなかった。 悲しいが。 きっと老朽化している。 砕けた壁の塊を強く握ると、サラサラとさらに細かな塊に…そして砂のように。 本当にどうなってやがる? ここは俺が住んでいた家なのは間違いない。 柱にある幼き頃に身長が伸びたか毎月調べた線でわかる。 名前も姉と俺のがしっかり書いてありやがる。 くそっ! 誰かいないのか! 廊下を歩いて、玄関へと向かう。 玄関前には壁に擦ったような黒い跡がついている。 そして壁の最後には手形が…。 だがそんなのにかまっている暇はない。 今は早く状況を知りたい。 玄関の扉さえなくなっていた。 一体何のために扉なんか持っていくんだ。 裸足なのを思い出し、靴箱を探すが見つからずに諦めた。 靴下のまま外に出る。
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