一:風色の恋

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 義父と那津を見ていると、なんだか一緒、なんだよね。  義父はにこにこして当たり障りのないような言い方をしているけど、なんだかそれがちょっと小馬鹿にしたような態度に取れなくもない。  那津は思いっきり馬鹿にした態度を取ってるし。  この親子、ワタシたち親子にけんかを売ってるんだろうか? 「あー、今日も愛しのお兄さまの話ですか」 「七海? どこをどう聞いたらそういう解釈ができるわけ?」  七海に今日の朝の出来事を話したら、そんなことを言われてしまった。 「うーん、なんていうの? 那津の態度が好きな子に意地悪するそれに似てるのよねぇ」  訳が分からないし。 「梨奈が戸惑ってるように、那津もきっと、梨奈とどう接していいのか分からなくて、彼なりに悩んでるんじゃないの?」  七海にそう言われたけど、あの那津が悩んでるようには全然思えない。 「ありえないでしょう、それ」  七海はなにかを言おうと口を開いたけど、無情にもチャイムがなってしまった。  那津が……悩んでる?  ありえない。  あの傲岸不遜な態度の那津が、悩んでるですって?
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