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ハウードリッヒ艦長の、オリゼア・スレイコフィナは、唇を噛んでいた。
「先の砲撃により、フィールド維持率が40%まで低下! このままではフィールドを破られるのも時間の問題です!」
ハウードリッヒには、勿論武装を積んではいない。ただの旅客宙船なのだから当たり前である。
しかしながら、客の中にはVIPがいる。乗客の脱出は勿論、VIPの脱出を優先せねばならない。
それに、敵戦闘艦は、此方の通信を受ける気はないようで、ハウードリッヒを拿捕する積もりのようだった。
「艦長! 敵戦闘艦が接舷して来る様子です!」
「出来る限り接舷を許すな、乗客の脱出ポッド搭乗を急がせろ!」
オリゼアは乗務員に、
「乗客の脱出ポッド搭乗率はどれくらいだね?」
と聞く。
「40%程度完了しています」
「そうか、VIPの搭乗は?」
オリゼアがそう聞くと、乗務員は顔を曇らせる。
「それが、艦長を出せと……」
オリゼアは舌打ちをする。
「直ぐに脱出ポッドにご案内してくれ」
「わかりました」
乗務員はそう言うと、艦橋を出ていった。
「艦長! フィールドが破られそうです!」
「持ちこたえさせろ!」
オリゼアは、苦悶の表情を浮かべながら、絶望的な状況をどう乗り切るか考えていた。
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