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伸也がしがみついて来る孝治の頭を、頑張って押し払いながらそう聞くと、真由美は答えた。
「さっきフライトアテンダントさんに聞いたんだけど、船体の後部に脱出ポットがあるんだって。皆を誘導したいから、修学旅行委員の赤羽くんに協力して貰おうと思って」
真由美の頼みに、伸也は頷いた。
「わかった。……そう言う訳だから、孝治。離れてくれよ」
伸也が面倒そうにそう言うと、孝治は次は真由美に食い付く。
「なぁ、若葉。脱出ポットって何処だよ!」
何か追い詰められたようにそう聞いてくる孝治に、真由美は気押されて答える。
「えっ? あっちで乗務員さんが誘導しているから……」
「サンキュー!」
真由美が其処まで言うと、孝治は今まで見たこと無いような速さで人混みに紛れて行った。
「……呆れた奴ね」
「全くだ……」
そんな孝治の様子に、伸也達は呆れる。
伸也は気を取り直して、真由美にこう指示した。
「じゃあ委員長、俺は此処にいる人達を誘導するから、向こうの方を頼む」
伸也の指示に、真由美は頷いた。
「うん、わかったわ。じゃあ赤羽くんは先生に報告をお願い。……もう逃げてるかも知れないけど」
真由美の言葉に、伸也は苦笑いしながら頷いた。
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