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「ああ。…って、話したっけ?」
伸也がそう聞くと、那奈は頷いた。
「うん。メールで言ってたじゃない」
伸也は少し考えたフリをする。
そう言えばそんな事言ったかも知れないと、記憶の片隅から断片を見つけた伸也は、唸る。
「あー……。言ったかも知れない」
「でしょ?」
「……多分。まあ、そんな訳で親父は単身赴任が多いんだよ。だから見送りに『ムーンベース』には良く来てた訳だ」
伸也は無理矢理話題を戻してそう説明した。
「へぇ~。寂しく無い?」
「別に。てか、毎回この話題になると聞くよな」
「そうかな?」
「ああ」
そんな会話を那奈としていると、何故か後ろから殺気を伸也は感じる。
「…………」
那奈のファンである男子は多い。学校にファンクラブがある事を思い出して、伸也はため息をついた。
伸也が那奈の顔を見ると、気付いていないのかはたまたスルーしているのか良く分からない顔をしている。
「ん? どうしたの? アタシの顔に何かついてる?」
「……いや、まぁ、相変わらずだなぁって思ってな」
「なんの事?」
本当に不思議そうな顔をしたので伸也は取り繕う。
「いや、何でもない。気にすんな」
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