瞳を閉じればそこに

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紗由貴の歌を聴いて、勝彦の目から涙がこぼれていた。 世間から歌姫と呼ばれている彼女の歌が、心に響かないわけがない。 これほどまでのシンガーになってくれたことが……そしてその彼女に自分の為の曲を作ってもらえたなんて…… 勝彦は嬉しくて仕方なかった。 やはりあの時、彼女の為を想い別れを決断した自分は間違ってはいなかったのだ。 あれから七年以上の時を経て今、 今も変わらず彼女のことを愛している自分がいて、 そして今も変わらず自分を愛してくれている彼女がいる。 紗由貴が歌い終わって、こっちを見た。 勝彦は袖口で涙を拭う。 そのとき…… 「行きましょう」 目の前に氷室が立っていた。 「氷室さん」 「もうええんとちゃいますか? もうアイツも子供とちゃうんやし、 アイツの好きって気持ち、ええ加減受け入れてやってもええと思いますけど」 「え……ええ、そうですね」 「ほな行きましょう」 氷室に促がされて、勝彦は席を立った。
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