1616人が本棚に入れています
本棚に追加
紗由貴の歌を聴いて、勝彦の目から涙がこぼれていた。
世間から歌姫と呼ばれている彼女の歌が、心に響かないわけがない。
これほどまでのシンガーになってくれたことが……そしてその彼女に自分の為の曲を作ってもらえたなんて……
勝彦は嬉しくて仕方なかった。
やはりあの時、彼女の為を想い別れを決断した自分は間違ってはいなかったのだ。
あれから七年以上の時を経て今、
今も変わらず彼女のことを愛している自分がいて、
そして今も変わらず自分を愛してくれている彼女がいる。
紗由貴が歌い終わって、こっちを見た。
勝彦は袖口で涙を拭う。
そのとき……
「行きましょう」
目の前に氷室が立っていた。
「氷室さん」
「もうええんとちゃいますか? もうアイツも子供とちゃうんやし、
アイツの好きって気持ち、ええ加減受け入れてやってもええと思いますけど」
「え……ええ、そうですね」
「ほな行きましょう」
氷室に促がされて、勝彦は席を立った。
最初のコメントを投稿しよう!