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「カッチャンなんで……何でいなくなっちゃったの? 私……私は……」
紗由貴の目からまた涙が零れ落ちた。
『紗由ぅう~~~頑張ってぇえ~~』
『頑張れぇえ~~~』
氷室が持っていたマイクを勝彦の口元にあてる。
「ごめん紗由貴ちゃん」
「何で?」
「それは……きっと俺の存在が君にとって邪魔になると思ったのと、
おれ自身がやっぱり自信がなかったんだ」
「今も?」
「え?」
「ううん……もういい。でも……今日来てくれたってことは、今もまだ私のことを……」
紗由貴は涙を拭った。
「紗由貴ちゃん……」
その時氷室が勝彦の肩に手をかけ、耳元に口をよせた。
「もう待たせたらアカンで、男やったらここでバシッとプロポーズくらいしたらな」
「プロ……」
驚いた顔の勝彦に、氷室はもう一度ニヤッと笑った。
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