瞳を閉じればそこに

19/20
前へ
/390ページ
次へ
「今もカッチャンが好きです。もうカッチャン以外の誰も」 「待った!」 「え?」 「その先は俺が言う」 「ぁ、うん……」 勝彦は氷室の持っているマイクを受け取った。 「人ってさぁ、みんな幸せに感じるレベルっていうのが違うと思うんだよ」 「え? ぁ、うん」 「例えば、大きな屋敷にお抱えのコックやメイドがいて、毎年海外に買い物に行って…… そういう生活が君の思う幸せなら、おそらく俺は一生君を幸せにしてやることは出来ないと思う。 だから今ここで、絶対に君を幸せにしてやるなんて、そんな無責任なことは口が裂けても言えないし、約束なんて出来ない。 でもねぇ紗由貴ちゃん、絶対に幸せにしてやるっていう約束は出来ないけど、 君を幸せにするための努力は、死ぬまで怠るつもりはない。 それだけは今ここで約束する。 だから……俺と結婚して欲しい」 『うわぁああああああ』 『やったぁあああああ』 『すごぉーーーーーい』 『紗由おめでとう』 紗由貴の目からまた涙が溢れて頬を伝う。 「うん」 紗由貴は返事をするとすぐに勝彦の胸に飛び込んだ。 勝彦は紗由貴の身体を抱きしめる。 大きなコンサート会場のステージの上。 抱き合った二人の唇が重なる。 『きゃああ~~~~~~~』 『おめでとう紗由ぅうう~~~』 『紗由ぅう~~~~』 『おめでとう』 抱きしめあった二人を会場を埋め尽くした全てのファンが祝福し、 いつまでも、いつまでも、会場は感動と興奮に包まれていた。
/390ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1616人が本棚に入れています
本棚に追加