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お陰さまで未だにファンがついていてくれて、いつもコンサートは満員になるから、つい辞めるに辞められない状況。
そのせいで美緒にはいつも淋しい思いをさせてしまうのだ。
明日は初めての参観日だから、娘が張り切っているのが痛いほど分かる。
紗由貴だって思い返せば、初めて母が見に来てくれた参観日はすごく張り切ったのだから……。
明日に備えて今日移動する。
マネージャーから電話が入り、マンションの下まで車で迎えに来てくれたらしい。
「じゃあ行って来るね」
紗由貴は笑顔で声をかけるのだが、美緒は背中を向けたままだった。
「はぁ……」
「まぁ仕方ないよ。俺がちゃんと代役を勤めとくから」
勝彦に優しく言われると、何だか逆に凹む。
「うん。じゃあ行ってくるね」
紗由貴はそう言って、玄関のドアを開けた。
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