そして10年後

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お陰さまで未だにファンがついていてくれて、いつもコンサートは満員になるから、つい辞めるに辞められない状況。 そのせいで美緒にはいつも淋しい思いをさせてしまうのだ。 明日は初めての参観日だから、娘が張り切っているのが痛いほど分かる。 紗由貴だって思い返せば、初めて母が見に来てくれた参観日はすごく張り切ったのだから……。 明日に備えて今日移動する。 マネージャーから電話が入り、マンションの下まで車で迎えに来てくれたらしい。 「じゃあ行って来るね」 紗由貴は笑顔で声をかけるのだが、美緒は背中を向けたままだった。 「はぁ……」 「まぁ仕方ないよ。俺がちゃんと代役を勤めとくから」 勝彦に優しく言われると、何だか逆に凹む。 「うん。じゃあ行ってくるね」 紗由貴はそう言って、玄関のドアを開けた。
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