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「それは構わへんけど、それやったらこの家にもあるはずやで」
「えっ!? DVDあるの?」
「絶対あるかは分からへんけど、たぶんあるはずやで」
「何っていう名前?」
「え~~~~~と……なんやたっけ」
「ジュンちゃん!」
「いや、ちょ、ちょっと待って思い出すから」
年間何十枚と出す作品の中の一枚を、正直いちいち覚えていないが、あれは特殊な作品だから、もちろん全く覚えていないことはない。
氷室は頭をフル回転させ、十年前の作品のタイトルを思い出そうとした。
「確か……」
氷室はペンと手帳を取り出し、タイトルを書き込む。
「美緒にはまだ読まれへんと思うけど、これと同じ字のヤツ探してみぃ。なかったら今度来るときに持ってきたるから」
書いたメモを破り美緒に手渡す。
「パパとママに見つからんようにな」
「うん」
「何やってるんですか?」
突然後ろから話しかけられた。
「うわぁああ!」
氷室は本気で驚いて、大声をあげる。
「な、何!?」
その声に今度は勝彦が驚いた。
「ビックリするやん!」
「いや、そんなに驚くとは……」
「あかん。心臓が痛い」
「ちょっと大丈夫ですか?」
勝彦が慌てる。
「大丈夫。そのコーヒー飲んだら治りますわ」
氷室は勝彦が運んできたコーヒーを指差しながら、何とか誤魔化せたとホッとした。
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