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「さて、さっそく本題なのじゃが……」
そう言って話を切り出した彼女はフローリングの床にあぐらをかいて座り、その手にはほこほこと湯気を立てる湯飲みがあった。
あの後。めんどくさいと駄々をこねる彼女を何とかなだめすかして床に座らせ、お茶を用意した。
それは、まがいなりにも助けてくれた事に対するお礼の気持ちであり、自分が落ち着く為でもあった。
「……所で、我が使い魔よ。お前の名前は何というのだ?」
もう、使い魔と言われる事に抵抗がなくなってきた自分が、怖い。
「近衛遥(このえはるか)だ。近接戦闘の近に、日本防衛の衛、そして遥か彼方の遥。それで、このえはるか」
なんて、外人に言っても分かるはずないのに――何を真面目に答えているのだろうか、僕は。
「なるほど。分かった。では改めて、遥よ――」
分かっちゃったよ! いや、これだけ時代を逆走した日本語が喋れるんだからそれぐらい分かるのか。そんな事を思っていると――
「儂を殺せ」
――――唐突に、かつ何の脈絡もなく、平然とそう言った。
わしをころせ?
ワシヲコロセ?
まいったな。やっぱり外人さんは日本語の使い方をいまいち理解していないみたいだ。
それだとまるで自分を殺してほしいみたいな言い方じゃないか、ハッハッハ。
「ん? 聞こえなかったのか? さあ、早く儂を殺すのだ。刺殺でも絞殺でも銃殺でも呪殺でも何でもいい。虐めるのが好きという特殊嗜好などにも少しだけ付き合ってやる。さあ、早く」
……最近の外人さんは難しい言葉知ってるんだなー。
ぐいぐいと股の間から身を乗り出してくるアザレナを見ながら、僕はしみじみと思った。
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