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傷が、治っていく。
変な形にひしゃげた両足が、腹部が、瞬く間に治っていく。
淡い光に包まれて、それこそさも当然のように治っていく。
理解できなかった。いや、したくなかった。
こんな、明らかな非日常を認めたくなかった。
――と。僕が、それこそ夢を見るような目で自分の体が修復された痕を眺めていると、ふいに少女が口を開いた。
「なんじゃ? せっかく助けてやったというのに、死んだ魚のような目をしおって。お主はアレか? え、と……死んだ魚か?」
そのまんまだった。その上、酷い言われようだった。
突然の出来事に僕が答えられないでいると、少女は暫し思案するようにその綺麗な顔をしかめ、何を勘違いしたのか、はたまた自分の中で自己完結させたのか、途端に顔をにぱっと輝かせて――
「ふむ、まあよい。さあ、さっさと立てザ・死んだ魚少年。今からお主は、この私、『アザレナ・アベンツェル』の名誉ある使い魔じゃ」
――とんでもない事をのたまった。
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