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「使い……魔……?」
自信満々に言い放った少女――もとい、アザレナ。その中に不穏な単語が混じっていたのを僕は聞き逃さなかった。
「うむ」
僕の問いに誇らしげに頷くアザレナ。
ああ、なる程。
最初から最後まで彼女が言う事は理解不能だけど、一つだけ分かった事がある。
この娘と関わると、絶対にロクな事がない!
早くこの場を離れなければ。でも、どうやって……?
ほんの少しの間悩んだあげく、僕はおそろしく古典的な方法にでる事にした。
大きく息を吸い、ピンと伸ばした人差し指を適当な方向に突き刺す。
「あっ! ネコが逆立ちしながら歩いてる!!」
「なにぃぃぃ!?」
予想外の食付きだった。
飛ぶ勢いで振り返り、どこじゃ、どこじゃと言いながら必死に辺りを見回している。きっと、今、彼女の瞳はあらんばかりに輝いているに違いない。
……ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ罪悪感に襲われた。
それでも、引っかかってくれた以上良しとしよう。
僕は即座に立ち上がり、ユーターン。そして、ダッシュ。さっきまで死にかけていたというのに、不思議と体が軽い。
たいして速くもない逃げ足をフル稼働させ、その場を後にした。
背中越しに、彼女の好奇心と期待に満ちた声を受けながら。
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