~1~

4/13
前へ
/26ページ
次へ
こうして、兎月は連れて来られた。重く鈍い音を立て扉が開く。 兎月が団員と共に足を踏み入れると声が飛んできた。 「連れて来たか? 新しい金蔓…いや生け贄ちゃんわよぉ」 気持ちの悪い笑みを浮かべて中年男が出てきた。 兎月は、一歩後ずさる。 それに目敏く気が付く男。兎月の顎を無理矢理掴み顔を挙げさせる。 「…今回は女かぁ? 最近は、男の方が…」 「コイツは、男ですよ。 蔓(カズラ)教師長」 団員は、ニヤリと口角をあげる。 「男?まるで女のようじゃないか」 舐めるように兎月を見る蔓。その時、声が教団内に響く。 「蔓教師長、そろそろ1116番の躾の時間では? 彼を任されたのはこの私ですよ。 返して頂けますか」 ニコリと緤呀 迅が微笑んだ。これが、兎月と緤呀の最初の出会いだった。 「フンッ…緤呀か。 団長に気に入られているからっていい気になるなよ」 そう言って、乱暴に手を離すと裾を翻し蔓は去って行った。 それを黙って見送ると緤呀が口を開いた。 「…ご苦労だったな。 後は、俺が引き継ぐ」 兎月を連れて来た団員は、はいと応えるとその場から去って行った。 取り残された兎月は、緤呀を見上げる。 .
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加