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こうして、兎月は連れて来られた。重く鈍い音を立て扉が開く。
兎月が団員と共に足を踏み入れると声が飛んできた。
「連れて来たか?
新しい金蔓…いや生け贄ちゃんわよぉ」
気持ちの悪い笑みを浮かべて中年男が出てきた。
兎月は、一歩後ずさる。
それに目敏く気が付く男。兎月の顎を無理矢理掴み顔を挙げさせる。
「…今回は女かぁ?
最近は、男の方が…」
「コイツは、男ですよ。
蔓(カズラ)教師長」
団員は、ニヤリと口角をあげる。
「男?まるで女のようじゃないか」
舐めるように兎月を見る蔓。その時、声が教団内に響く。
「蔓教師長、そろそろ1116番の躾の時間では?
彼を任されたのはこの私ですよ。
返して頂けますか」
ニコリと緤呀 迅が微笑んだ。これが、兎月と緤呀の最初の出会いだった。
「フンッ…緤呀か。
団長に気に入られているからっていい気になるなよ」
そう言って、乱暴に手を離すと裾を翻し蔓は去って行った。
それを黙って見送ると緤呀が口を開いた。
「…ご苦労だったな。
後は、俺が引き継ぐ」
兎月を連れて来た団員は、はいと応えるとその場から去って行った。
取り残された兎月は、緤呀を見上げる。
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