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「…帰りたい…」
ポツリとベッドの上に座る兎月が呟いた。
「不可能だ。
何度も同じようなことを言わせるな」
いつの間に入って来たのか渫呀が部屋に立っていた。
「…そんなこと分かってる…。
此処では、願望さえも言ってはダメなの…?」
いいや、確かにそんな規定は無いな。渫呀は首を振った。
「…ねぇ…、貴方も結構若いよね…?何歳」
「あぁ…。
25歳だけど。…それが?」
ふぅん…。兎月は、首にぶら下げた十字架を握り締めながら言った。
「…兄弟とか居ないの…?」
渫呀は、その言葉に目を細めた。
「…お前は、何が言いたい?
…同情して欲しいのか?
それとも、自分を逃がせと言いたいのか?」
「…そんなんじゃ…」
フッと鼻で笑う渫呀。そして、いいこと教えてやろうか?と口を開いた。
「お前に同情する分けないだろう?
まして、逃がすなんてしないね。
兄弟?なんだそれ。
俺に兄弟なんて、それ以前にそんなふうに言える家族なんて居ないよ。
お前みたいな幸せな家庭なんて、ただのまやかしだ。ただの幻想に過ぎない。
第一に俺は、此処の出だからな」
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